焼売用包装容器事件 【意匠判決紹介】

平成29年(ワ)第8272号損害賠償等請求事件
判決文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/096/089096_hanrei.pdf

◆事案の概要
本件は、焼売用包装容器に係る意匠権を有する原告が、焼売用包装容器(被告製品)を製造・販売する被告らに対し損害賠償を請求した事案です。
裁判所は、被告製品に係る意匠は本件登録意匠に類似すると判断し、被告らに対し 5,888 万 7589 円等の支払いを命じました。

両意匠の類否について、裁判所は、両意匠の差異点はいずれも要部に関するものであり、その差異点の一つにおいては美観が異なると言わざるをえないとしながらも、全体としては美観を共通にする類似意匠であると判断しました。
類否判断に際しては、被告製品が本件登録意匠である原告製品を意図的に真似したものであること等の事情も勘案されたのではないかと考えます。

 

 

◆訴訟に至るまでの流れ
原告は食品包装容器の製造販売等を行う会社であるところ、焼売等の製造販売を営む訴外株式会社浪漫亭から、「焼売を載せたままで蒸すことができるトレイ」の開発を依頼されました。原告は本件登録意匠となるトレイ(原告製品)を開発し、浪漫亭に納入を開始しました。
その後、浪漫亭は、以前より取引のあった被告らに対し、原告製品と同じような製品の納入を依頼しました(被告らは、事前に原告価格よりも安い価格の見積書を提示しています)。被告らは、浪漫亭から、原告製品の底のX字部分の形状に何らかの権利があるため全く同じものにはしないよう指示を受け、底部の十字状の「突条」の中央部分を開けた形状に変更し納入しました(被告らは原告の有する特許権については調べたのですが、意匠権の存在には思い至りませんでした)。

 

◆裁判所の判断
上記差異点のうち,突条の形状に関する差異は,要部に関するものであって,収容部の中央に位置し,その形状から焼売等を直接支える機能をイメージさせることから,需要者が上方又は斜め上方から食品包装用容器を観察する際,最も注目を引く差異であると考えられる。
そして,2本のX字状の突条と,4本の非交差で中央に空間のある突条では,美感が異なると言わざるを得ない
しかし,被告製品の突条も,収容部の対角線上に位置し,その先端が丸みを帯びている点においては,本件意匠の突条と類似しており,突条の幅の太さにも顕著な差はない。また,被告製品の突条の中央部分にある空間の直径は,突条全体の長さの約4分の1であり,突条の空間側の突端も,先端側と同様に丸みを帯びているため,全体として,被告意匠の突条は,X字状の中央部分を欠くもの,X字が変化した形状という印象を与える
・・・以上より,上記突条の形状の差異は,意匠を全体的として観察した際に,美感に決定的な影響を与える差異であるということはできない。

本件意匠と被告意匠との差異点は,いずれも要部に関するものではあるが,その差異が共通点を凌駕するものではなく,本件意匠と被告意匠は,全体として需要者に一致した印象を与えるものであり,美感を共通にするというべきであるから,被告意匠は,本件意匠に類似すると認められる。

以上

 

 

徳永弥生

徳永弥生