(床に)体当たり取材の巻

こんにちは、キャシーです。
いま、私の目の周りは黒く腫れています。家ではパンダと呼ばれています。

 

パンダ

 

なんでこんな顔なのか、理由を話せば長くなるのですが、聞いて頂いてよろしいでしょうか。

現在わたくし、文章力を鍛えたくて、とあるライティングの学校に通っています。毎週の授業のほかに、宿題が出ます。「webニュースのタイトルを考える」「広告目的のインタビュー記事を1000字以内で書く」など、超実践的なものが次々出るのですが、目下の宿題は「情報誌の記事 8 ページを企画。なるべく酒場メインで、梅田を特集」というもの。

これには困りました。わたくし、夜に出歩く機会がありません。お店をちーっとも知らない上、お酒も弱く、いわゆる飲み屋さんには本当に縁がないのです。けど、宿題は宿題です。なんとか仕上げて提出したいのです。
そう、宿題を踏み倒すことにかけては誰にも負けないはずのこのわたくしが、この学校のものは全部真面目にやって提出しているのです。自分でもびっくりさ!

仕方ないので、梅田で遊んでいそうな身近な人、うちの所長に話を聞いたり、下戸で酒場に縁はないけれど私よりは場数を踏んでいそうなダンナさんに話を聞いたりして情報を集めましたが、やっぱり自分で体験した一次情報に勝るものはありません(学校でもそう習ったよ!)。
そこで、土曜の夜、子供たちと夫に夕食を提供してから、ひとりで夜の梅田に取材に繰り出すことに致しました。事前にピックアップしておいた「レーズンバターがおいしそうな店(理由:好物だから)」を 5 軒回るのが目標です。コーヒー屋で働いていた時は、ひとりで喫茶店を 5 軒はしごしたりしていましたのもの、きっと大丈夫。

まずは、いちご入りレーズンバターを出している北新地のバーに行ってみました。いちごの赤がチラホラ散って、見た目も可愛いこちらのブツは、クラッシュアイスを満たしたグラスの上に乗って華麗に登場です。
6P チーズサイズのものが 2 切れあります。ゆっくりお酒とお喋りを楽しみながら、1 時間くらいかけて少しずつ味わっていきたいところですが、こちとらあと 4 軒回らないといけない身です。ノンアルコールのモヒートを 1 杯注文し、ケーキを食べるくらいの勢いでやっつけましたが、とても大変でした(すごくおいしかったけど)。別なもんも食べたいところですが、それでは取材が成立しません。30 分くらいで席を立ち、2軒目に向かいました。

2軒目はお初天神近く、「隠れ家」と呼ぶのがぴったりくるような、こぢんまりとして居心地の良いバーでした。こちらのレーズンバターは、ラム酒とウイスキーに漬けこんだ香りのよいレーズンを使った自家製です。
10 円玉サイズのものがクラッカーに乗って登場します。食べやすくて、この調子ならまだまだ回れるぜ!と調子に乗り、ここでは弱いお酒も注文しました。クランベリージュースの赤が綺麗なカクテルがとっても美味しかったです。調子に乗って、クランベリー味のノンアルコールカクテルをもう1杯作ってもらって飲み、3軒目へと向かいました。

しかし、このあたりからこの取材計画のツメの甘さが露呈します。
まずレーズンバター。いくら好きでも、たくさん食べられるものではありませんでした。そのくせ、全然おなかに溜まりません(最初に気付けよ)。食欲に負けたわたくし、まったく予定になかったのですが、お好み焼きの匂いに引き寄せられ、急遽腹ごしらえをすることに致しました。
豚玉を注文し、スマホなんぞ触りながら焼けるのを待っているうちに、嫌な予感。なんだか頭がくらくらしてきました。もしかして酔っぱらった?普段なら酔わない量のアルコールしか摂取していないはずなのに、すきっ腹にはこたえたのでしょうか。
やば、と思って慌てて席を立ち、お手洗いのドアノブに手をかけました。
そこで記憶はブラックアウト。

―目を開けたら、トイレの黒い床が目の前にありました。
床に寝そべった私に店員さんが必死に声をかけてくれています。
唇が切れて血の味がし、右のおでこには触ってすぐ分かるような大きなたんこぶができていました。
そう、わたくし、トイレに入ると同時に脳貧血を起こしてぶっ倒れたようなのです。
自分では全然覚えていないけれど、傷の具合から察するに、顔から床に突っ込んだ模様。

「ドン、ってすごい音がしたから開けてみたら倒れてはって」

「意識はある?」

「お連れの人は」

「救急車を」

背後から聞こえるいろんな人の声で、思った以上に自分の状況がえらいことになっているのに気が付きました。
酔っちゃったなあ。アルコール出さなきゃ。
無理やり立ち上がって、吐いてみます。
それを見た店員さんが更に慌てました。
しまった、さっき飲んだのは赤いカクテルだった……

「これは飲み物の色で、血ではない」と訴えたいのですが、気分が悪くうまく喋れません。そうこうしている間に救急隊のお兄さんが到着し、担架に乗せられました。
お金払わなくちゃ、と担架の上でごそごそ財布を出すと、「気にしなくていいから、また食べにきて !!」と、店員さん達は涙の出るような優しい対応でわたくしを見送ってくれました。

救急車の中で、そしてかつぎ込まれた脳神経外科で、倒れた時の状況について根掘り葉掘り、いろんなことを聞かれました。

「ひとりで飲んでたの?」

―ええ、そうです。

「何時から?何杯飲んだの?」

―えーと、7 時くらいから。お酒は 1 杯だけ。

「あんまり飲んでへんのに倒れたの?誰か迎えに来てくれる人はいる?」

―はい、家に夫がいます。飲まない人だから、頼めば車で来てくれると思います。

「ふーん、旦那さん、飲まないんやね…」

救急隊員さんと看護師さん、顔を見合わせています。

そりゃそうだ。飲まない旦那さんを家に放置して、なんでこのおばちゃんは一人で飲み歩いてるん?どういう状況?なんかトラブル?とか、モヤモヤしてはるのでしょう。
うん、解るよ、その気持ち。看護師さんの立場なら、自分もそう思うな。
けど違うねん!色々込み入ったしょーもない事情があるねん!ああ、喋りたい。
「実は学校の宿題のためにひとりで取材をしてまして、いえ、私ライターでもなんでもないんですけれど、ええ、その、いろいろありまして」
って、しどろもどろでもいいから説明したい!
でも気持ち悪くてそれどころじゃない!

頭部 CT を撮ったり、目の動きを見たりの診察を受け(問題ありませんでした)、横になって気持ち悪さに耐えていたら、ダンナさんが末っ子と共に車で迎えに来てくれました。
さすがに申し訳なくて「迷惑かけてごめんね」と謝ったら、即座に「迷惑なんかじゃない」と答えてくれたダンナさんには、感謝しかありません。

有名な宇宙人の写真のように、ダンナさんと末っ子に両脇から支えられ、フラフラしながらなんとか自宅に帰って死んだように眠りました。そして遅く目覚めた翌日曜日、わたくし、3 人の子供それぞれから事情聴取を受け、それぞれからお叱りの言葉を頂戴しました。「母ちゃんが救急車で運ばれた」と聞いて、思うところがあったようです。そして、3 人とも「もう外でお酒は飲むな」とクギを刺してきました。トンデモ母ちゃんなわたくしを反面教師にして、勝手に立派に育ってくれたようです。誠にありがたいことでございます。

彼らに言われるまでもなく、今回は、本当にお酒が怖くなりました。わたくしの飲酒における問題点は、お酒に弱いことではなく、突如ぶっ倒れる脳貧血を起こしやすいことなのだ、ということを身をもって学習致しました。足元があやしくなったことは今までにもありましたが、倒れた前後の記憶が全くないのはこれが初めてです。現場がお店のトイレだったので、店員さんがすぐに見つけてくれて適切な処置につないでもらえましたが、これが車道のど真ん中や駅のホーム、階段、水場の近くだったりしたら、リアルに命にかかわります。
最低あと 10 年、末っ子が成人するまでは何があっても死ねません。死ねないので、外で飲むのはやめておきます。

そしてこの転倒から 4 日後。
朝起きて鏡を見たら、右目の周りが真っ黒でした。
(はい、ようやく書き出しの状況にたどり着きました!長々とお付き合い頂き、誠にありがとうございます)

倒れた時に目の周りは打っていません。押しても痛くない。変だなあ、夜中にまた転んだのか?とかよくよく考えてみましたところ、ひとつ思い当たることがありました。
それは、右のおでこにできたたんこぶ。
たんこぶには血が溜まります。そして、溜まった血は、日が経つと下に降りてくることがあるのです。問題のたんこぶはちょうど、右目の上にありました。

長男がまだちびっ子だったころ、おでこのド真ん中にでっかいたんこぶをこしらえたことがありました。
数日後、そのたんこぶから鼻筋に沿って両頬へと溜まった血が流れ、長男の顔には隈取りのような青黒いラインが出現。昔の椿鬼奴さんみたいになったのを思い出しました。

そして現在のこの顔、どこからどう見ても、DV 夫に殴られた奥さんのそれであります。
気の毒なのはうちのダンナさんです。酔っぱらった嫁を夜中に迎えに行く羽目になった上に、やってもいない DV の疑いをかけられてはたまったものではありません。
ですのでわたくし、ダンナさんの名誉を守るため、毎日ファンデーションとコンシーラーをごってり塗り、垂らした髪と大きめのマスクでもってパンダのような右目をごまかしております。末っ子からは「ママ、中二病みたい」という感想をもらいました。ぺこぱの松陰寺さん(右)みたく、前髪を垂らしてヴィジュアル系を意識したアイメイクをしたり、血豆色のネイルを塗ったりしたらしっくりきそうです。

 

ぺこぱ

 

ぺこぱ
(画像はサンミュージックオフィシャルウェブサイトよりお借りしております)

 

そして何より、倒れた現場、お初天神通りの「ゆかり」の店員さんには本当に本当にお世話になりました。
週末の忙しい時間帯に店の前に救急車を呼んでしまい、誠に申し訳ありませんでした。優しい対応が身に沁みました。
今度食べ盛りを連れてお店に行きますので、微力ながら売り上げに協力させてください!

 

お好み焼ゆかり 曽根崎本店
大阪府大阪市北区曽根崎2-14-13
https://tabelog.com/osaka/A2701/A270101/27001885/

 

Kathy

Kathy