amazonに対する商標権侵害の申立が、不競法2条1項21号に該当すると判断された事件【不競法判決紹介】

平成30年(ワ)第22428号 不正競争行為差止等請求事件(東京地方裁判所)

判決文:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/629/089629_hanrei.pdf

原告 ワールドトレーディング株式会社

被告 株式会社COMAX JAPAN

 

〔事件の概要〕

 本件は、原告がamazonで商標「COMAX」を付して枕・マットレス・枕カバー等を販売していたところ、原告と競争関係にある被告がamazonブランド登録を利用してamazonに対し原告商品が被告の権利を侵害する旨の申告を行ったため、原告が、被告に対し、不競法31項に基づき、原告商品の販売が被告の有する商標権を侵害するとの虚偽の事実を第三者に告知又は流布することなどの差止め、及び損害賠償金5802500円及び遅延損害金の支払いを求めた事案である。

 なお、原告は商標「COMAX」(標準文字)を第20類「マットレス,まくら,クッション,座布団,家具」において商標登録しており、原告販売商品はいずれも第20類に属する枕、マットレス等であった。

 一方、被告が保有する商標「COMAX」の商品区分は第17類「天然ゴム,ゴム」であった。

〔本件の争点〕

争点:被告がamazonに行った申告が虚偽事実の告知に当たるか(不競法2条1項21号該当性)

争点:原告の損害の有無及びその額

 

〔裁判所の判断〕

1.争点①について

「原告各商標は,別紙原告商標目録記載のとおり,標準文字の「COMAX」から構成されるものなどであり,いずれも「第20類 マットレス,まくら,クッション,座布団,家具」を商品区分とするものであるところ,原告商品は,いずれも第20類に属する枕,マットレス等であって,原告各商標を付したものである。これに対し,被告各商標は,いずれも,商品区分を「第17類 天然ゴム ゴム」とするものであるから,原告商品は被告各商標権を侵害するものではない。」と判断した上で、

「以上のとおり,本件申告は,原告商品が本件各商標権を侵害していることを趣旨とするものであり,その内容は,被告と競争関係にある原告の営業上の信用を害する虚偽の事実であり,不競法2条1項21号の不正競争行為に該当するので,原告は,被告に対し,原告商品の販売が被告の有する商標権を侵害するとの虚偽の事実を第三者に告知又は流布することの差止めを求めることができる。」と判断しました。

2.争点②について

(1) 不競法5条2項に基づく損害

「原告は,本件サイトにおける原告商品の出品が停止された令和元年8月までの15か月間に,被告は,被告商品の販売により,少なくとも月間8万5000円程度の利益を得ていたはずであるから,不競法5条2項に基づき,被告に対し,8万5000円に15月を乗じた127万5000円の損害賠償を求めることができると主張する。

しかし,被告は,本件申告の前後を通じて,特に販売態様等を変えることなく被告商品を販売していたと認められるところ,証拠(乙22~24)によれば,被告商品の売上全体(別紙1)及び本件サイトに限定した被告商品の売上げ(別紙2)のいずれについても,本件申告後の売上げは,むしろ減少しているものと認められる。

そうすると,被告は,本件申告に係る不正競争行為により,営業上の利益を得たということはできず,本件申告とその後の被告商品の販売による利益との間に相当因果関係があると認めることはできない。」として、不競法52項に基づく損害は認められませんでした。

(2) 無形損害

「前記判示のとおり,被告による本件申告は,原告が被告の商標権等を侵害しているというものであり,その内容は,原告及び原告商品の信頼を低下させるものであり,本件申告の申告先であるアマゾン社は全世界的なインターネット通販サイトを運営する企業である。加えて,本件申告は,原告が自らの商標を商品に付していることを容易に知り得たにもかかわらず,これを「偽造品」と称するものであって,その態様は悪質であることにも照らすと,原告の営業上の信用を毀損する程度は小さくないというべきである。

しかし,他方で,本件申告は,アマゾン社に対するもののみでありインターネットなどを通じて,不特定の需要者,取引者に対して告知したものではないことなどの事情も認められ,こうした事情も含め,本件に現れた諸事情を総合的に考慮すると,原告に生じた無形損害は,50万円であると認めるのが相当である。」と判断し、50万円の無形損害を認めました。

 

〔コメント〕

 商標権侵害に関する申告ページを設けるECサイトやプラットフォーマーが増えており、従前に比べると商標権侵害の申立が行われやすくなっております。

しかしながら、ECサイト側は申立が行われたときに十分な調査や検討を行った上で販売停止等の対応を行うのではなく、申告者の申立内容だけで対応するケースが多いように見られます。

そのため、本件の原告のように登録商標を正しく使っているにもかかわらず不当に販売停止される場合も少なくありません。(弊所に相談があったケースでも、明らかに非類似の商標なのに「商標権侵害をしている。模倣品を販売している。」とamazonに申告され、アカウント停止まで行われそうになったというケースがありました。また、このケースの申告が商標権者からではなく、しかも実在しない企業名で申告されており、悪意しか感じない申告でした。)

そのようなことから考えますと、本件のように明らかに商標権侵害に該当しないケースのECサイトへの申告が不競法2121号に該当すると判断されたことは意義があると考えます。

清水三沙

清水三沙