【不競法判決紹介】ユニットシェルフ事件

服部 京子

【不競法判決紹介】ユニットシェルフ事件

 

平成28年(ワ)第25472号 不正競争行為差止等請求事件(東京地裁)
判決文:http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/056/087056_hanrei.pdf

事件の概要

本事案は、「無印良品」を展開する原告・株式会社良品計画が自己の販売する組み立て式の棚であるユニットシェルフを販売する原告が、ホームセンターチェーンを展開する被告・カインズ当該ユニットシェルフが周知の商品等表示であるとして、類似するユニットシェルフを販売する被告・株式会社カインズの行為が、不正競争防止法2条1項1号の不正競争に当たるとし訴えた事案です。

本事案については、原告の主張が認められ被告に販売差止め等が命じられました。なお、被告は控訴する方向であることをコメントしています。

争点

(1) 原告商品形態についての周知の商品等表示該当性の有無
(2) 原告商品と被告商品の類似性及び混同のおそれの有無
(3) 被告商品における商品等表示の使用の有無

今回の争点は、以上の3点ですが、今回はそのうち商品等表示該当性について取り上げたいと思います。

商品等表示該当性
商品の形態が商品等表示に該当するかについては、これまで同様に以下の通り示しています。

商品において,形態は必ずしも商品の出所を表示する目的で選択されるものではない。もっとも,商品の形態が客観的に明らかに他の同種の商品と識別し得る顕著な特徴を有し,かつ,その形態が特定の事業者により長期間独占的に使用されるなどした結果,需要者においてその形態が特定の事業者の出所を表示するものとして周知されるに至れば,商品の当該形態自体が「商品等表示」(不正競争防止法2条1項1号)になり得るといえる。

そもそも原告のユニットシェルフは基本構造に追加の棚やバスケットやソフトボックス、様々なオプションパーツを購入者が自由に組み合わせることができるというものです。本事案における原告商品はいわゆる基本構造にあたる部分であり、原告商品は以下の形態①~⑥を有するとされています。

原告商品は,組立て式の棚として,側面の帆立(原告商品形態①),棚板の配置(原告商品形態③),背側のクロスバー(原告商品形態④)が特定の形態を有するほか,帆立の支柱が直径の細い棒材を2本束ねたものであるという特徴的な形態(原告商品形態②)を有し,また直径の細い棒材からなる帆立の横桟及びクロスバー(原告商品形態⑤)も特定の形態を有するもので,それらを全て組合せ,かつ,全体として,上記の要素のみから構成される骨組み様の外観を有するもの(原告商品形態⑥)である。

裁判所は、これら形態的特徴について以下のように判断し、原告商品にいわゆる特別顕著性があると認定しました。

ここで,原告商品及び同種の棚の構成要素として,帆立,棚板,クロスバー,支柱等があるところ,これらの要素について,それぞれ複数の構成があり得て(前記⑴ケ),また,それらの組合せも様々なものがあり,さらに,上記要素以外にどのような要素を付加するかについても選択の余地がある。原告商品は,原告商品と同種の棚を構成する各要素について,上記のとおりそれぞれ内容が特定された形態(原告商品形態①~⑤)が組み合わされ,かつ,これに付加する要素がない(原告商品形態⑥)ものであるから,原告商品形態は多くの選択肢から選択された形態である。そして,原告商品形態を有する原告商品は,帆立の支柱が直径の細い棒材を2本束ねたという特徴的な形態に加えクロスバーも特定の形態を有し,細い棒材を構成要素に用いる一方で棚板を平滑なものとし,他の要素を排したことにより骨組み様の外観を有する。原告商品は,このような形態であることにより特にシンプルですっきりしたという印象を与える外観を有するとの特徴を有するもので,全体的なまとまり感があると評されることもあったものであり(同キ),原告商品全体として,原告商品形態を有することによって需要者に強い印象を与えるものといえる。このことに平成20年頃まで原告商品形態を有する同種の製品があったとは認められないこと(同ク)を併せ考えると,平成16年頃の時点において,原告商品形態は客観的に明らかに他の同種商品と識別し得る顕著な特徴を有していたと認めることが相当である。

なお、被告は原告商品形態の各個別の形態はありふれた形態であることや特有の機能を得るために不可避的に採用せざるを得ない形態である旨を主張しましたが、以下の通りその主張を退けました。

原告商品形態が他の同種の商品と識別し得る特徴を有するといえるか否かを検討する際は,原告商品形態①~⑥のうちの個別の各形態がありふれている形態であるか否かではなく,原告商品形態①~⑥の形態を組み合わせた原告商品形態がありふれた形態であるかを検討すべきである。

上記各個別の形態について,原告商品形態とは異なる構成を採ることができ(前記⑴ケ),かつ,原告商品形態が上記各個別の形態の組合せからなることに照らせば,原告商品形態が特定の機能等を得るために不可避的に採用せざるを得ない構成であるとの被告の主張は採用することができない。

また、周知性に関しては、

ユニットシェルフは,パーツも有し,棚とパーツが組み合わされたりするものであるが,原告商品形態を有する原告商品は,「スチール棚セット」等のセットとして扱われ,カタログにおいても,そのようなセットとして,高さや幅が異なる複数の種類の原告商品の写真が原告商品形態を一見して識別できる形で掲載されて宣伝され,また,店舗においてもそれらのセットとして販売されていたことがうかがえる。そうすると,原告商品は,全体の外観に特徴を有する原告商品形態を有する一連の商品として,原告商品形態を一見して認識し得る形で長期間,相当大規模に宣伝等され,販売されてきたといえる。
そして,原告商品のような大きさを有する棚はこれを設置する室内においても目立つものであるところ,原告商品形態は原告商品全体の外観に関わり,また,原告商品は全体的なまとまり感があると評されることもあったようなものであることなどから,原告商品の購入者は,原告商品形態を含む原告商品のデザインにも着目してこれを購入したことがうかがわれる。
他方,原告商品形態と同じ形態の商品が平成20年頃までの間に販売されたことを認めるに足りない。

とし平成16年頃には商品等表示として需要者に広く認識されていたと判断しました。また、「平成20年頃以降,原告以外によって製造販売された原告商品形態を有する商品は最大でも2万セット,判明している台数を合計しても1年当たり8900セットから4万2900セットであって,販売期間も数年にとどまっており,原告商品の規模の数分の1にとどまる。」として、現在における周知性も認定しています。

以上より、裁判所は原告の商品等表示性について認める判断をしました。

シンプルでありながらデザイン性もある無印良品のファンであるという方も多いのではないでしょうか。今般の事案は形態模倣(第3号)ではなく周知な商品等表示に基づくものです。

商品の形態が商品等表示性に該当するためには、裁判所が示している通り周知性が必要となりますが、本当にこの形態を見た需要者が無印良品の(良品計画の)商品であるとわかるほど周知といえるのかが気になるところです。被告は控訴する方向でとのコメントを出していますので、ぜひ知財高裁の判断を待ちたいと思います。

以上

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